香典袋どれがいい？コンビニや100均は？金額別の選び方とマナー

突然の訃報に接し、慌てて準備をするとき、手元にある封筒でよいのか、それとも新しく買い直すべきか迷うことは誰にでもあります。特に中身の金額が1万円や3万円といった節目になると、どの水引の色や本数、あるいは紙質の袋を選べば失礼にならないかは、大人として非常に悩みどころです。

また、市販の袋に付属している短冊シールの扱い方も意外と知られておらず、正しい貼り方や「御霊前」「御仏前」の選び方に戸惑うことも少なくありません。故人を偲び、ご遺族に哀悼の意を伝える大切な場面だからこそ、マナー違反だけは避けたいものです。

金額別で香典袋はどれがいい？選び方の基本

香典袋を選ぶ際、最も重要かつ基本となる基準は「包む金額」です。香典袋には明確な「格」が存在し、中身の金額と外側の袋の豪華さが釣り合っていることがマナーの鉄則とされています。

もし中身が少額であるのに、見た目が豪華な水引のついた袋を使ってしまうと、受け取ったご遺族が「高額が入っている」と誤解したり、開封後に「こんなに立派な袋なのに中身と合っていない」と違和感を抱かれたりする原因となります。

逆に、高額を包むのに簡易的な印刷の袋では、礼を欠いた印象を与えてしまいます。ここでは、金額に応じた適切な選び方を具体的に解説します。

3千円から5千円は印刷の水引を選ぶ

職場の同僚やご近所の方、あるいは友人のご家族などへ、お付き合いの程度に合わせて3,000円から5,000円程度を包む場合があるでしょう。この価格帯であれば、水引が封筒に直接印刷されているタイプを選ぶのが正解です。

この金額帯で実物の水引がついた豪華な袋を使ってしまうと、ご遺族に過度な気を使わせてしまうだけでなく、香典返しの集計作業を行う際に「1万円以上クラスの袋」として誤って分類されてしまうリスクもあります。あくまで「略式」の形をとることで、相手に負担をかけないという配慮になります。

1万円を包むなら黒白の実物水引

香典として最も一般的な金額である1万円から2万円を包む場合は、印刷された簡易的なものではなく、黒白の実物の水引がかかっている香典袋を選びます。

袋の紙質は、標準的な「奉書紙（ほうしょがみ）」が使われているものが適しています。コンビニエンスストアやスーパー、文具店で数百円程度で販売されている、最もスタンダードなパッケージ入りのタイプがこれに該当します。

水引の本数は5本や7本が一般的ですが、地域によっては本数に細かい決まりがある場合もあります。しかし、基本的には「黒白の水引」で「あわじ結び（または結び切り）」のものであれば、全国的に失礼にはあたりません。

関東地方など一部では、1万円程度でも「双銀（銀色のみの水引）」を用いるケースが増えていますが、迷った場合は黒白を選ぶのが無難です。

3万円以上は双銀や高級和紙が適切

親族や特にお世話になった恩人などへ、3万円から5万円を包む場合は、袋の格を一段階上げる必要があります。この金額帯では、水引は黒白ではなく、「双銀（すべて銀色の水引）」を選ぶのがより丁寧で格式高いマナーとされています。

また、重要なのが「袋の素材」です。1万円用の袋と同じような平滑な紙ではなく、表面に凹凸のある「手漉き風和紙」や「大礼紙（たいれいし）」など、厚みと質感のある上質な紙が使われているものを選びましょう。3万円以上のお札を入れると中袋に厚みが出ますので、ペラペラの薄い袋ではバランスが悪く、不格好に見えてしまいます。

10万円など高額なら大判サイズを選ぶ

両親や兄弟、非常に深い付き合いのある方へ10万円以上を包む場合は、通常サイズ（約105mm×185mm）よりも一回り大きい「大判」や「特大」サイズの香典袋を使用します。

10万円分の紙幣を入れると、厚みは1センチ近くになります。通常サイズの袋では中袋がパンパンになり、外袋の裏側が綺麗に重ならないなど、見た目が著しく損なわれる恐れがあります。

大判の袋は水引も複雑な「飾り結び（あわじ結びの変形や鶴亀など）」になっており、最高ランクの格式を表します。袋のパッケージに「包む金額の目安：10万円〜」と記載されているものを必ず確認しましょう。

急ぎならコンビニの香典袋でも大丈夫

訃報は突然のことですので、準備の時間が取れず、コンビニエンスストアで香典袋を購入することもあるでしょう。結論から言えば、コンビニで購入した香典袋を使ってもマナー違反にはなりません。大手紙製品メーカーもコンビニ向けに商品を展開しており、品質自体に問題はないからです。

最近のコンビニは品揃えも豊富で、3,000円用の印刷タイプから、1万円用の黒白水引の標準タイプまではほぼ確実に揃っています。ただし、3万円以上を包むための「双銀・高級和紙」タイプや「大判」タイプは、店舗の規模によっては置いていないことも少なくありません。

もし3万円以上の高額を包む予定がある場合は、コンビニを何軒も回るより、早めに文具店や百貨店、あるいは大型のホームセンターへ向かう方が確実に入手できます。

宗教やマナーで香典袋はどれがいいか迷う場合

金額による選び方を理解した次に注意すべき点は、故人の「宗教」や「宗派」です。仏教、神道、キリスト教など、宗教によって選ぶべき香典袋の柄や表書き、水引の有無が異なります。

間違った柄を選んでしまうと、相手の宗教を尊重していないと思われかねません。ここでは、宗教ごとの違いや細かいマナー、よくある疑問について解説します。

仏教以外は蓮の花の絵柄を使わない

市販の香典袋には、薄墨で「蓮（ハス）の花」が描かれているものや、蓮の模様が型押しされているものがあります。これらは非常に一般的ですが、あくまで仏教（仏式）専用のデザインであることを理解しておきましょう。

蓮は仏教において「泥の中から清らかな花を咲かせる」として極楽浄土を象徴する花です。そのため、神道（神式）やキリスト教式の葬儀で蓮の絵柄の袋を使うのは、教義上ふさわしくなく、マナー違反となります。

相手が仏教徒だと確信が持てる場合以外は、蓮の絵柄が入っていない「無地」のタイプを選ぶのが最も安全な選択です。

キリスト教や神道なら白無地を選ぶ

もし故人の宗教が神道やキリスト教であるとわかっている場合は、基本的に「白無地」の封筒や奉書紙を選びます。

相手の宗教が全くわからない、あるいは無宗教のお別れ会などの場合は、どのような宗教でも使える「白無地で黒白水引（または双銀）」のスタンダードな香典袋を選び、表書きを「御霊前」や「御香典」とするのが無難です。

香典袋の短冊シールの使い方と貼り方

購入した香典袋には、あらかじめ「御霊前」や「御仏前」と書かれた短冊状の紙（短冊シール）が付属していることがよくあります。これらは使用しても失礼にはあたりませんが、包む金額や袋の格式に合わせて使い分けるのがベターです。

1万円程度までの一般的な香典袋であれば、付属の短冊シールを使っても問題ありません。貼り付ける際は、袋の中央に真っ直ぐになるよう慎重に位置を合わせます。シールタイプでない（裏に糊がない）場合は、裏面の上部に少量の糊をつけるか、水引の間にしっかりと挟み込んで固定します。

表書きや名前は薄墨の筆ペンで書く

香典袋に名前や金額を書く際は、通常の黒ではなく「薄墨（うすずみ）」の筆ペンを使用するのが正式なマナーです。

これには「悲しみの涙で墨が薄まってしまった」や「急いで駆けつけたため墨をする時間が十分になかった」という哀悼の意味が込められています（参照：株式会社呉竹：不祝儀袋(香典袋)の正しい「書き方」と「選び方」）。ボールペンやサインペン、濃い黒の筆ペンを使うのは、準備万端で待っていたような印象を与えかねないため避けましょう。

ただし、中袋に書く住所や金額については、事務的な処理のしやすさや読み間違いを防ぐ観点から、濃い黒のペン（ボールペン等）で書いても許容される場合があります。全日本冠婚葬祭互助協会の案内でも、筆記用具に関する配慮について触れられています。 （参照：一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会「お葬式のマナー」）

中袋なしや関西の黄白水引の注意点

簡易的な印刷タイプの香典袋には「中袋（お札を入れる白い封筒）」がついていないものがあります。これは3,000円から5,000円程度の少額を包む際に使われることが多く、お札を直接袋（裏側）に入れても問題ありません。しかし、1万円以上を包む場合は、お札を守り礼を尽くすために、必ず中袋がついているタイプを選ぶのが基本です。

また、地域特有のルールとして有名なのが、関西地方（京都、大阪、兵庫、滋賀など）や北陸の一部で見られる「黄白（黄色と白）」の水引です。通夜や告別式では全国同様に「黒白」が使われることが多いですが、地域によっては四十九日法要だけでなく葬儀の段階から黄白を用いるケースもあります。

地域の風習に不安がある場合は、独断で選ばず、地元の親戚や近所の方に確認するか、その地域のコンビニやスーパーで「一番多く売られているもの」を参考にすると良いでしょう。

迷ったら香典袋はどれがいいかの結論

ここまで解説してきた香典袋選びのポイントをまとめました。急いでいる時や、売り場で迷った時のチェックリストとして活用してください。