香典袋の印刷は失礼?マナーや薄墨設定から無料テンプレート・アプリ活用術まで徹底解説

香典袋の印刷で失敗しない!薄墨設定や短冊テンプレート早見表 仏教

急な訃報に接して香典袋を用意しなければならないとき、筆ペンでの手書きに自信がなくて困ってしまうことはありませんか。

故人を偲び、心を込めて書きたいと思っても、普段使い慣れない筆文字ではどうしても文字が歪んでしまったり、インクが滲んでしまったりと、上手く書けずに焦ってしまうものです。「汚い字で書くくらいなら、いっそ印刷の方が失礼にならないのではないか」と悩む方も少なくありません。

実は近年、マナーさえしっかり押さえていればパソコンやプリンターを使って印刷で済ませることも一般的になりつつあります。インターネット上で公開されているテンプレートの無料ダウンロードサイトを活用したり、名前を作成するアプリを使って整った文字を用意したりすることで、字に自信がない方でも綺麗で失礼のない香典袋を準備することが可能です。

手書き特有の温かみも大切ですが、相手にとっての「読みやすさ」もまた一つの配慮です。この記事では、宗派ごとの表書きの選び方から具体的な作成手順、印刷後の包み方までを徹底解説します。

  • 香典袋を印刷で済ませる際のマナー上の判断基準と現代の傾向
  • 宗教や宗派によって厳密に異なる正しい表書きと言葉の選び方
  • パソコンやスマホアプリを使って自宅やコンビニで作成する具体的な手順
  • 印刷した短冊の正しい貼り方と、悲しみを表す香典袋の包み方

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香典袋を印刷する際のマナーと注意点

古くからの慣習として手書きが推奨される香典袋ですが、印刷することが必ずしもマナー違反になるわけではありません。事実、市販の香典袋にはすでに「御霊前」などの文字が美しく印刷されているものが多く流通しています。

しかし、名前部分を自分で印刷する場合、相手に失礼な印象を与えないためには、文字の美しさだけでなく、宗教ごとの表書きの違いや色のルール、そして最後の包み方まで細心の注意を払う必要があります。

ここでは、印刷を選択する際の判断基準や、絶対に守るべきマナーの基本について解説します。

印刷は失礼にあたらないか判断する基準

印刷は失礼にあたらないか判断する基準

香典袋の表書きは、本来であれば故人を悼みながら自筆で書くことが最も丁寧なマナーとされています。これは、手間をかけて墨をすり、筆を運ぶ時間そのものが弔意を表すとされているためです。

しかし、現代においてはライフスタイルの変化とともに「読みやすさ」や「清潔感」を重視する傾向が強まっており、汚い字で判読できない手書きよりも、印刷された整った文字の方が、後で整理をする遺族や関係者にとって親切であるという合理的・実務的な考え方も広まっています。

特に、文字を書くことが極端に苦手な方や、怪我や加齢などで文字が書けない状況にある場合、無理をして手書きにする必要はありません。

老舗の文具メーカーである株式会社ササガワ(タカ印)の公式サイトにおいても、近年ではプリンター対応の「のし紙」やテンプレートが多く提供されており、印刷文化が冠婚葬祭の場にも浸透していることがうかがえます。(参照:株式会社ササガワ:テンプレートダウンロード

ただし、受け取る相手が伝統的なしきたりを重んじる年配の方である場合や、地域特有の慣習が強く残っている場所では、「手書きの手間を省いた=心がこもっていない」と受け取られるリスクもゼロではありません。相手との関係性や地域の風習を考慮し、臨機応変に判断することが大切です。

以前は「印刷なんてけしからん」という声もありましたが、最近は葬儀社の担当者の方でも「読めない文字よりは、はっきりと読める印刷の方が集計時に助かる」とおっしゃることが増えています。あまり悩みすぎず、丁寧に準備し、相手に失礼のない形を整えることが大切ですよ。

宗教や宗派に合わせて表書きの言葉を選ぶ

印刷する前に必ず確認しなければならないのが、故人の宗教や宗派に合わせた「表書き(上段の文字)」です。一般的に使われる「御霊前」ですが、実はすべての葬儀で使えるわけではありません。

宗教的背景を理解せずに間違った表書きを印刷してしまうと、大変失礼にあたるため注意が必要です。以下の表を参考に、故人の信仰に合わせた正しい言葉を選んでください。

【宗教・宗派別】香典袋の表書き早見表
宗教・宗派 適した表書き 注意点と詳細
仏教(一般的) 御霊前 四十九日の法要前まで使用可能。四十九日を過ぎると「御仏前」となるため、法要のタイミングに注意が必要。
浄土真宗 御仏前 「霊」という概念がなく、人は亡くなるとすぐに仏になるという教えのため、通夜・葬儀の時点から「御仏前」を使用。「御霊前」はNGとされる。
神道 御玉串料 御榊料 御神前 「御霊前」も使用可だが、仏教の象徴である蓮の花の絵柄が入った不祝儀袋は避ける。白無地または銀の水引を選ぶ。
キリスト教 御花料 献花料 カトリックでは「御霊前」も使用可だが、プロテスタントでは避ける。「忌慰料」なども使われる。百合の絵柄や十字架が入った封筒が好ましい。

もし故人の宗教が全くわからない場合は、仏教・神道・キリスト教(カトリック)のいずれでも比較的許容されやすい「御霊前」を選ぶのが無難ですが、相手が浄土真宗である可能性がある場合は特に注意が必要です。

文字色は必ず薄墨に設定して印刷する

文字色は必ず薄墨に設定して印刷する

香典袋を印刷する際に最も注意しなければならないのが、文字の色設定です。お通夜や告別式に持参する香典の表書きは、「涙で硯(すずり)の墨が薄まってしまった」「急なことで墨を十分に磨(す)る時間がなかった」という意味を込めて「薄墨(うすずみ)」で書くのが正式なマナーです。

したがって、プリンターで印刷する場合も、くっきりとした真っ黒(ブラック100%)で印刷してしまうと、マナー違反となり、準備万端で待ち構えていたかのような印象を与えかねません。

パソコンでデータを作成する際は、文字の色を意図的にグレーに設定しましょう。一般的には、黒の濃度を60%〜70%程度に落とすか、Webカラーコード(16進数)で「#666666」〜「#7d7d7d」あたりを指定すると、自然な薄墨の風合いに近づけることができます。

家庭用インクジェットプリンターの設定で「白黒印刷(モノクロ)」を選ぶと、グレーが粗いドット(網点)の集合体で表現され、文字の輪郭がギザギザになってしまうことがあります。

薄墨を滑らかに綺麗に表現するためには、あえて「カラー印刷」設定を選び、文字色自体をグレーに指定して高画質モードで印刷するのがコツです。

失敗が少ない短冊への印刷がおすすめ

失敗が少ない短冊への印刷がおすすめ

香典袋の本体(封筒部分)に直接印刷しようとすると、水引(飾り紐)の凹凸が邪魔になって給紙できなかったり、紙の厚みや和紙の繊維が原因でプリンター内部で紙詰まりを起こしたりするトラブルが頻発します。

多くの家庭用プリンターは、和紙のような特殊な紙質や、封筒のような厚みのある用紙の給紙に対応していません。

そこでおすすめなのが、「短冊」のみを印刷する方法です。多くの市販されている香典袋には、名前を書くための細長い短冊紙が2〜3枚付属しています。

あるいは、普通のA4サイズのコピー用紙に名前を印刷し、それを短冊の大きさに合わせてカッターで切り抜き、香典袋に貼り付ける方法であれば、プリンターの機種を選ばずに安全かつ確実に作成できます。

100円ショップや文具店で売られている香典袋には、最初から「御霊前」などの表書きが印刷された短冊と、無地の短冊がセットで入っています。無地の方を使えば、自宅での印刷もスムーズに行えます。万が一失敗しても、コピー用紙なら何度でもやり直しがきく点もメリットです。

中袋の住所や金額も印刷なら読みやすい

香典袋の外側(表書き)だけでなく、お金を入れる「中袋(内袋)」の記入も非常に重要です。中袋には、遺族が葬儀後に香典返しを行ったり、会計を整理したりする際に不可欠な「住所」「氏名」「金額」を記入します。

実はこの中袋こそ、事務処理上の正確性が求められるため、癖のある手書き文字よりも、判読しやすい印刷文字が推奨されるケースが多い箇所です。

特に金額の記入には、数字の改ざんを防ぐために「大字(だいじ)」と呼ばれる旧字体の漢数字を使うのがマナーとされています。普段使い慣れない「壱」や「萬」といった漢字も、パソコンやスマホで変換すれば間違いなく入力できるため安心です。

【金額の書き方と大字の対照表】
数字 通常の漢数字 大字(旧字体) 使用例
1 金 壱萬圓 也
2 金 弐萬圓 也
3 金 参萬圓 也
5 (または五) 金 伍萬圓 也
10 金 壱拾萬圓 也
10000 金 壱萬圓 也

中袋に関しては、読みやすければボールペンや万年筆を使用しても問題ありませんが、表書きと同様に薄墨風のグレーで印刷するか、黒色で印刷しても構いません(中袋は事務的な情報源であるため、濃い黒でも許容されることが多いですが、念のため薄墨にしておくと丁寧です)。

印刷した短冊のきれいな貼り方と包み方

印刷した短冊のきれいな貼り方と包み方

文字をきれいに印刷できたとしても、最後の仕上げである「貼り付け」や「包み方」で失敗しては意味がありません。印刷した短冊を香典袋に貼る際と、外包みを折る際には、弔事特有の厳格なルールがあります。

まず、印刷して切り抜いた短冊は、香典袋の中央にまっすぐ配置します。このとき、短冊が浮いたり剥がれたりしないように、裏面の上部と下部に少量の糊(のり)をつけるか、両面テープを使ってしっかりと固定します。そして最も重要なのが、香典袋(外包み)の裏側の折り方です。

弔事(お悔やみ)では、「悲しみが流れ落ちるように」「頭を下げて哀悼の意を表す」という意味で、上の折り返しを下に被せるのが絶対的なマナーです。慶事(結婚式など)の「幸せを受け止める(下を被せる)」包み方とは逆になるため、絶対に間違えないようにしましょう。

【裏側の折り方の鉄則】 ■弔事(香典):上側の折り返しを、下側の折り返しの上に被せる(頭を下げる形) ■慶事(祝儀):下側の折り返しを、上側の折り返しの上に被せる(上を向く形)

香典袋の印刷に便利なツールと作成手順

 

ここからは、実際に香典袋を印刷するための具体的なツールと手順について解説します。パソコンを持っている方はメーカー公式の無料テンプレートを活用するのが最も早道ですし、パソコンがない方でもスマートフォンのアプリを使えば簡単に作成できます。ご自身の環境に合わせて最適な方法を選んでください。

無料のテンプレートをダウンロードする

無料のテンプレートをダウンロードする

 

一からWordやExcelでレイアウトを作成するのは手間がかかりますが、インターネット上には香典袋や短冊専用の無料テンプレートが多数公開されています。これらを活用すれば、ファイルをダウンロードして名前部分を書き換えるだけで、バランスの取れた美しい香典袋が完成します。

例えば、Microsoftの公式サイトでは、家庭やビジネスで使えるWord形式の慶弔テンプレートが無料で提供されています。また、香典袋メーカーであるササガワなどの公式サイトでも、自社製品のサイズにぴったり合わせた専用テンプレートや、Web上で文字を入力してPDFを作成できるツールなどが無料で配布されています。

これらの信頼できる提供元のテンプレートを使用することで、サイズミスやレイアウト崩れを防ぐことができます。(参照:Microsoft Office テンプレート

Wordで用紙サイズや縦書きを設定

Wordで用紙サイズや縦書きを設定

テンプレートを使わずにWord(ワード)で自作する場合は、ページ設定が重要になります。短冊のサイズ(例:幅35mm×高さ180mmなど)に合わせて詳細な用紙設定を行うか、あるいは一般的なA4サイズの用紙設定のまま、「テキストボックス」機能を使って文字を配置する方法があります。

最も簡単で失敗が少ないのは、A4用紙に「縦書きテキストボックス」を挿入し、短冊の幅に合わせて文字サイズや行間を調整する方法です。フォントは、筆文字に近い「行書体」や、読みやすい「教科書体」を選ぶと、手書きに近い落ち着いた雰囲気が出せます。

標準の「MS明朝」や「MSゴシック」などは、少し事務的で硬い印象になってしまうため、弔事用としては避けたほうが無難かもしれません。

エクセルを活用して連名を綺麗に作る

エクセルを活用して連名を綺麗に作る

職場の同僚やサークルの有志など、複数人の名前を連名で記載したい場合は、WordよりもExcel(エクセル)の方がレイアウト調整が容易です。セル(マス目)を使って文字を配置することで、名前の頭位置をきれいに揃えたり、均等にスペースを空けたりといった微調整が直感的に行えます。

連名のマナーとして、目上の人(役職者や年長者)を一番右側に配置し、順に左へ書いていくのが基本ルールです。3名までなら短冊に並べて書きますが、4名以上になる場合は、全員の名前を短冊に書くと文字が小さくなりすぎるため、代表者の名前のみを表書きにし、左側に「他一同」と書き添えます。

そして、全員の氏名と住所、それぞれの金額を書いた別紙(リスト)を作成し、中袋に入れます。エクセルであれば、こうした別紙のリスト作成も非常にスムーズに行えます。

名前の作成に便利なアプリを活用する

「家にパソコンもプリンターもない」という方には、スマートフォンアプリの活用がおすすめです。「のし袋」や「表書き」作成に特化したアプリ(例:『のし袋』『マナーの虎』など)を使用すれば、スマホの画面上で名前を入力するだけで、プロの書家が書いたような美しい筆文字の画像を自動生成してくれます。

アプリの中には、フォントの種類(行書・楷書・草書など)を選べるものや、文字の太さ、そして重要な「薄墨風の色味」まで調整できるものがあります。

生成された画像は、写真データとしてスマホ内に保存できるため、これを後述するコンビニ印刷サービスと組み合わせることで、パソコンやプリンターを持っていなくても香典袋の準備が完了します。

スマホで作ってコンビニで印刷する手順

スマホで作ってコンビニで印刷する手順

アプリで作成した名前のデータを印刷するには、コンビニエンスストアに設置されているマルチコピー機を利用します。セブン-イレブンの「ネットプリント」や、ローソン・ファミリーマートの「ネットワークプリント」などの専用アプリをスマホにインストールし、作成した画像をアップロードして「予約番号」を発行します。

コンビニに行き、マルチコピー機に予約番号を入力すれば、その場で印刷が可能です。印刷する際は、「はがきサイズ」や「L判写真サイズ」ではなく、「A4普通紙」を選択するのが最大のポイントです。写真用紙だと光沢がありすぎて香典袋には不向きですし、普通紙の方が和紙のような短冊の質感に自然に馴染むためです。印刷後は、カッターと定規を使って丁寧に切り抜きましょう。

(参照:セブン-イレブン ネットプリント 公式サイト

(参照:シャープマーケティングジャパン:ネットワークプリントサービス(ローソン・ファミリーマート等)

印刷時のよくある疑問とトラブル対処法

印刷時のよくある疑問とトラブル対処法

最後に、香典袋を印刷する際によくある疑問や、印刷時に発生しがちなトラブルについての解決策をQ&A形式でまとめました。印刷を実行する前に一度確認しておくと、無駄な失敗を防ぐことができます。

Q. パソコンに筆文字フォントが入っていません。どうすればいいですか?
A. インターネット上で無料公開されているフリーフォント(例:「衡山毛筆フォント」など)をダウンロードしてインストールするか、WindowsやMacに標準搭載されている「楷書体」や「行書体」を使用しても問題ありません。ただし、ポップ体や丸ゴシック体はカジュアルすぎるため、弔事では絶対に使用しないでください。
Q. 100円ショップの香典袋に印刷しても大丈夫ですか?
A. 香典袋自体は100円ショップで購入したものでも全く問題ありませんが、袋本体への直接印刷は紙詰まりや汚れのリスクが高いため推奨しません。付属している短冊を使うか、別途A4用紙に印刷して貼り付ける方法で行ってください。
Q. 連名で印刷する場合、文字が小さくなっても良いですか?
A. 3名連名などで短冊の幅に収める場合、文字サイズが多少小さくなるのは仕方ありません。しかし、あまりに小さすぎて読めない場合は本末転倒です。その場合は、代表者1名の名前のみを中央に書き、左下に「他一同」として別紙を添えるのが正しいマナーです。

状況に合わせて香典袋の印刷を活用する

状況に合わせて香典袋の印刷を活用する

香典袋の印刷に関するマナーや具体的な作成方法について解説してきました。最後に、今回の記事の要点をまとめます。印刷は決して手抜きではなく、相手への「読みやすさ」という配慮の一つとして活用できる有効な手段です。以下のポイントを参考に、ご自身の状況に合わせて最適な方法を選んでください。

  • 香典袋の印刷は、現代においてはマナー違反とはみなされない傾向にあり、読みやすさが評価される
  • 手書きに自信がない場合、汚い字で書くよりも印刷の方が遺族に対して親切な場合がある
  • 故人の宗教や宗派(特に浄土真宗の「御仏前」など)に合わせて、正しい表書きを慎重に選ぶ
  • 表書きの文字色は、悲しみを表すために必ず「薄墨(グレー)」に設定して印刷する
  • Webカラーコード「#666666」程度を目安に設定し、カラー印刷モードを使用すると綺麗に仕上がる
  • 香典袋本体への直接印刷は紙詰まりの原因となるため避け、短冊への印刷かA4用紙の切り抜きを行う
  • 中袋の住所や金額は事務的な正確さが求められるため、手書きよりも印刷が適している
  • 金額の数字は改ざん防止のために大字(壱・弐・参など)を使用するのが正式なマナーである
  • 香典袋の裏側の折り方は「悲しみが流れるように」上側を被せるのが弔事の絶対ルールである
  • メーカー公式やWeb上の無料テンプレート、スマホアプリを活用して効率的に作成する
  • コンビニ印刷を利用する際は、光沢紙ではなく「普通紙」を選ぶと自然な仕上がりになる
  • 形式にとらわれすぎず、故人を悼む気持ちを込めて丁寧に準備することが最も大切である
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