新しくお位牌を準備される際、「開眼供養(魂入れ)のお布施はいくら包めばいいのか」「魂入れのお布施の表書きや袋はどう準備するのか」など、多くの疑問や不安が生じるものです。
特に四十九日などの大切な法要と同時に行う場合や、夫婦位牌を新たに準備する際、あるいは古いお位牌の閉眼供養(魂抜き)のお布施が重なる場合、そのマナーは非常に複雑に感じられるかもしれません。
また、位牌料の表書きや位牌代の封筒の書き方といった実務的な準備も必要になります。さらには、ご自身の宗派、例えば曹洞宗などによっても、魂入れそのものに対する考え方や儀式の方法が異なるため、「うちの場合はどうすれば?」と悩まれる方も少なくないでしょう。
この記事では、そうした皆様の具体的な疑問や不安を一つひとつ丁寧に解消していきます。
- 位牌の魂入れ(開眼供養)のお布施相場
- お布施袋や表書きの正しいマナー
- 曹洞宗や浄土真宗など宗派による違い
- 魂抜き(閉眼供養)や夫婦位牌の注意点
位牌の魂入れとお布施の基本マナー
位牌の魂入れ(開眼供養)は、故人の魂を新しく作られたお位牌に宿らせるための、非常に大切な儀式です。単なる「モノ」であったお位牌が、この儀式を経て初めて、故人そのものとして手を合わせる対象となります。
この重要な儀式を僧侶にお願いする際、読経や儀式に対する感謝の気持ちとして「お布施」をお渡しするのが古くからの慣習です。ここでは、そのお布施の相場から、封筒(袋)の選び方、表書きの具体的な書き方といった基本的なマナーについて、詳しく解説していきます。
開眼供養のお布施、相場は?

位牌の魂入れ(開眼供養)でお渡しするお布施の金額は、儀式を単独で行うか、それとも四十九日などの他の法要と同時に行うかによって、目安となる金額が変わってきます。
まず大前提として、お布施はあくまで僧侶やご本尊への「感謝の気持ち」を示すものであり、儀式に対する「料金」や「対価」ではありません。そのため、明確な定価が存在しないのが特徴です。しかし、実際には多くの方が悩まれるため、一般的な目安とされる相場が存在します。
お布施の金額目安
- 魂入れ(開眼供養)のみ単独で行う場合: 10,000円 ~ 30,000円程度
- 四十九日法要などと同時に行う場合: 30,000円 ~ 50,000円程度(法要全体のお布施として)
四十九日や一周忌などの法要と合わせて魂入れを行うケースが最も多いです。この場合の「30,000円~50,000円」という金額は、主に法要本体に対するお布施であり、魂入れの分もその中に含まれていると考えるのが一般的です。法要のお布施とは別に、魂入れのお布施を必ず用意しなければならない、ということではありません。
もし、どうしてもお気持ちとして別に示したい場合は、法要のお布施(例:3万円)とは別に、5,000円~10,000円程度を「開眼供養御礼」や「御布施」と書いた別の封筒で包むこともあります。
また、お布施とは別に、以下の費用を準備するのが丁寧なマナーとされています。
- 御車料(おくるまりょう): 僧侶にご自宅や法要会場までお越しいただいた(ご自身で送迎をしなかった)場合に、交通費としてお渡しします。相場は5,000円~10,000円程度ですが、遠方の場合は実費相当をお包みします。
- 御膳料(おぜんりょう): 法要後の会食(お斎=おとき)に僧侶が参加されない場合に、お食事代としてお渡しします。相場は5,000円~10,000円程度です。
これらは必ずお布施の封筒とは別に、それぞれ白無地の封筒に「御車料」「御膳料」と書いて用意してください。
金額はあくまで目安です
ここで紹介した金額は、あくまで全国的な目安に過ぎません。お布施の金額は、お寺との関係性(先祖代々お世話になっている、など)や地域性によって大きく異なる場合があります。「〇〇円でなければならない」という決まりは一切ありません。
金額に迷った際は、菩提寺(ぼだいじ)や地域の事情に詳しい親族、または葬儀社に「皆様、どのようになさっていますか?」と率直にご相談いただくのが最も確実で安心な方法です。
魂入れのお布施の袋の選び方

お布施を包む袋(封筒)は、適切なものを選ぶ必要があります。スーパーやコンビニでも様々な種類のものが売られていますが、間違ったものを選ぶと意図せず失礼にあたる可能性があるため、注意深く選びましょう。
最も一般的で、どの宗派・地域でもまず間違いないとされるのは、郵便番号枠が印刷されていない白無地の封筒です。中袋(お金を入れる内袋)がセットになっているものを選ぶとより丁寧です。
すでに「御布施」と印字された市販の専用封筒を使用しても、もちろん問題ありません。
水引は必要?
魂入れ(開眼供養)は、故人を偲ぶ「弔事(ちょうじ)」でありながら、仏様が新しくお位牌に入る「仏様の家開き」という側面も持つため、慶事(けいじ)とも弔事とも言い切れない儀式です。そのため、水引をどうすべきか悩む方が多いのです。
結論から言うと、水引は基本的には不要とされています。白無地の封筒で十分です。
もし水引が付いた封筒を使う場合は、地域によって習慣が異なります。一般的に関西では「黄白」、関東では「黒白」や「双銀」の結び切り(一度きりを意味する)が使われることがありますが、これはむしろ法要の側面が強い場合です。魂入れ単独の儀式であれば、水引なしの白封筒が最も無難な選択と言えます。
魂入れのお布施の表書きとは

お布施袋を準備したら、表面に毛筆または筆ペンで「表書き」を記します。この際、サインペンやボールペンは避け、丁寧に楷書で書くことを心がけてください。特に重要なのが「使用する墨の色」です。
表書きのポイント
- 使用する墨: 濃墨(こいすみ)
- 上段(名目): 「御布施」(または「お布施」「開眼供養御礼」)
- 下段(氏名): 施主のフルネーム、または「〇〇家」
お通夜やお葬式のお香典(御霊前)では、「悲しみの涙で墨が薄まった」「突然のことで墨をする時間がなかった」という意味を込めて「薄墨(うすずみ)」を使います。しかし、魂入れ(開眼供養)は、不幸な出来事ではなく、「仏様が新しくお位牌に入る」という儀式であり、前もって準備するものです。そのため、薄墨は絶対に使わず、必ず濃墨(こいすみ)ではっきりと書くのがマナーです。
中袋(内袋)の書き方
中袋がある場合は、表面の中央に包んだ金額を縦書きで記入します。この際、金額の改竄(かいざん)防止などの慣習から、下記のような旧字体(大字)を用いるのが最も丁寧です。
- 10,000円 → 「金 壱萬圓」 または 「金 壱萬円也」
- 30,000円 → 「金 参萬圓」 または 「金 参萬円也」
- 50,000円 → 「金 伍萬圓」 または 「金 伍萬円也」
中袋の裏面には、左下に施主の住所と氏名を記入します。これにより、お寺側がどなたからのお布施かを管理しやすくなります。
中袋がない白封筒の場合は、封筒の裏面の左下に、住所、氏名、そして金額(例:金参萬円)を直接記入してください。
お布施を渡す際の基本マナー

お布施は、僧侶への感謝の気持ちを込めて、丁寧にお渡しすることが大切です。準備したお布施をいつ、どのように渡すかという作法(マナー)についても知っておきましょう。
渡すタイミング
お布施を渡すタイミングに厳格な決まりはありませんが、以下のいずれかのタイミングでお渡しするのが一般的です。
- 儀式(法要)が始まる前の、ご挨拶の時: 僧侶が到着され、準備を始められる前に「本日はどうぞよろしくお願いいたします」というご挨拶とともに先にお渡しします。
- 儀式(法要)が全て終わり、僧侶がお帰りになる前: 全ての儀式が滞りなく終わった後、「本日は誠にありがとうございました」というお礼のご挨拶とともにお渡しします。
ご自宅での法要であれば終了後でも構いませんが、法要会館など別の場所で行う場合は、僧侶も次の予定があるかもしれません。法要が始まる前に控室などでご挨拶とともにお渡しする方が、慌ただしくならずスムーズです。
渡し方の作法
お布施を封筒のまま裸でカバンから出したり、手渡ししたりするのはマナー違反とされています。必ず「袱紗(ふくさ)」と呼ばれる布に包んで持参し、敬意を払ってお渡しします。
袱紗には様々な色がありますが、慶事用(暖色系)と弔事用(寒色系)があります。紫色の袱紗は、慶事・弔事どちらにも使えるため、一つ持っておくと非常に便利です。
お渡しする際は、まず僧侶の前で袱紗からお布施袋を取り出します。そして、畳んだ袱紗をお盆代わりにしてその上にお布施袋を乗せます。向きは、僧侶から見て表書きの文字が読める向き(自分とは逆向き)にして、両手で丁寧に差し出します。「本日はどうぞよろしくお願いいたします」といった感謝の言葉を添えることを忘れないでください。
もしお寺や会館に「切手盆(きってぼん)」と呼ばれる小さなお盆が用意されている場合は、袱紗から取り出したお布施を切手盆の上に乗せて差し出します。
位牌料の表書きはどう書くか

「位牌料(いはいりょう)」という言葉は、非常に曖昧で、文脈によって二つの意味で使われることがあり、これが混乱の原因になりがちです。
- お寺に「位牌の作成(戒名書き含む)」を依頼し、その費用を支払う場合
- 仏具店で「位牌(モノ)」を購入し、その代金を支払う場合(=位牌代)
ここでは、1の「お寺に位牌の準備そのものを依頼した場合」について解説します。(2については次の項目で解説します)
菩提寺によっては、お付き合いのある仏具店と連携し、戒名を位牌に彫る作業(または書く作業)まで含めて一括で準備してくださる場合があります。この場合、お寺にお支払いするお金の表書きは、「御位牌料」や「御布施」とします。
これは、魂入れの儀式に対するお布施とは別に、位牌本体や戒名の文字入れにかかる実費や手間賃としてお渡しするものです。お布施と同様に白封筒に入れ、濃墨で書くのが一般的です。金額については、お寺から指定がある場合もあれば、「お気持ちで」と言われる場合もありますので、事前にお寺にご確認いただくのが最も確実です。
位牌代の封筒の書き方を解説

「位牌代(いはいだい)」とは、一般的に、仏具店で位牌(モノ)を購入した際の「商品代金」を指します。これは僧侶にお渡しする「お布施」や「位牌料」とは全く異なるものです。
仏具店への支払いですので、現代では多くの場合、銀行振込やクレジットカード決済が可能です。もし現金を持参して支払う場合に封筒に入れるのであれば、表書きは「御位牌代」とするのが一般的ですが、お店のレジでそのままお支払いしても何ら問題はありません。
ここで重要なのは、「お布施」と「位牌代」を明確に区別することです。
【比較表】お布施と位牌代の違い
| 項目 | お布施(魂入れ) | 位牌代 |
|---|---|---|
| 渡す相手 | 僧侶(お寺) | 仏具店 |
| 意味合い | 儀式・読経への感謝の気持ち(宗教行為) | 位牌という商品に対する代金(商業行為) |
| 封筒の表書き | 御布施、開眼供養御礼 | 御位牌代(または不要) |
| 領収書 | 原則なし(対価ではないため) | あり(商品購入のため) |
この二つは渡す相手も意味も全く異なりますので、混同しないように明確に分けて準備してください。
位牌の魂入れとお布施の宗派と関連知識
位牌の魂入れ(開眼供養)の考え方や、それに伴うお布施の扱いは、ご自身の宗派によって異なる場合があります。特に、浄土真宗のように「魂入れ」そのものの概念が他の宗派と大きく異なるケースもあるため、注意が必要です。また、魂入れとセットで行われることが多い「魂抜き(閉眼供養)」や、近年増えている「夫婦位牌」についても、特有の疑問が生じがちです。ここでは、そうした魂入れに関連する知識や宗派ごとの違いについて、詳しく解説していきます。
魂入れにおける宗派ごとの違い
「魂入れ(開眼供養)」の儀式を重んじる宗派が多い一方で、一部の宗派では根本的にその概念が異なります。ご自身の宗派がどれにあたるか、事前に確認しておくことが大切です。特に注意が必要なのが「浄土真宗」です。
浄土真宗の場合
浄土真宗では、「往生即成仏(おうじょうそくじょうぶつ)」という教えが根本にあります。これは、故人は亡くなるとすぐに阿弥陀如来のお力(本願力)によって極楽浄土で仏になる(成仏する)という考え方です。そのため、故人の魂がこの世に留まって位牌に宿ったり、さまよったりするという考え方をしません。
したがって、「魂入れ」や「魂抜き」といった儀式は行いません。 (出典:浄土真宗本願寺派(お西)「お盆の紹介(お仏壇の中に置かないもの)」)
その代わり、お仏壇や位牌(浄土真宗では位牌を用いず、「過去帳(かこちょう)」や「法名軸(ほうみょうじく)」を用いるのが正式です)を新しく迎えた際は、「入仏法要(にゅうぶつほうよう)」や「御移徙(ごいし・おわたまし)」と呼ばれる法要を行います。
これは「魂を入れる」ためではなく、「ご本尊(阿弥陀如来)をお迎えし、仏様の家が整ったことをお祝いし、感謝する儀式」です。この場合、お布施の表書きは「御布施」のほか、「入仏御礼」「御移徙御礼」などとすることもあります。
その他の主な宗派
曹洞宗、臨済宗、真言宗、天台宗、日蓮宗などの多くの宗派では、位牌に故人の魂を宿らせるための「魂入れ(開眼供養)」の儀式を重要視します。これら宗派の場合は、これまで解説してきた一般的なマナー(お布施の相場、表書き、袋の選び方など)に沿って準備を進めて問題ありません。
魂入れのお布施、曹洞宗の場合

曹洞宗は、お釈迦様から代々の祖師方によって正しく受け継がれてきた「坐禅」を教えの中心とする禅宗の一派です。曹洞宗においても、新しく用意したお位牌や仏像、お仏壇には、「開眼供養(かいげんくよう)」または「入魂式(にゅうこんしき)」と呼ばれる儀式を行うことを重要視します。
これは、仏師が作った仏像や位牌に、最後に僧侶が法要を行うことで「眼を開き」、単なる「モノ」であったお位牌にご本尊の功徳や故人の魂を宿らせ、手を合わせる対象(礼拝の対象)とするための大切な儀式です。(出典:曹洞宗公式サイト 曹洞禅ネット「お仏壇のまつり方」)
曹洞宗における魂入れのお布施の相場やマナーについては、特に独自の厳しい決まりがあるわけではありません。前述した一般的な目安(単独なら1〜3万円、法要と同時なら法要のお布施に含める)を参考にしていただいて大丈夫です。もちろん、お寺との関係性や地域によって異なりますので、不安な場合は菩提寺にご相談ください。
魂入れを法要と行う際の注意点

魂入れ(開眼供養)は、四十九日法要の際に行われるのが最も一般的です。仏教の多くの宗派では、故人の魂は四十九日(7週間)をもって、次の行き先が決まるとされています。この重要な節目に、それまで使用していた仮の「白木位牌」から、新しく作った「本位牌」へと故人の魂を移す儀式が行われます。
四十九日法要と魂入れを同時に行う場合、お布施は「法要のお布施」としてまとめて包むのが一般的です。金額の目安は30,000円~50,000円程度とされますが、これもあくまで目安であり、法要の規模やお寺との関係で変動します。
「四十九日法要のお布施と、魂入れのお布施を別々に包むべきか?」と悩まれる方もいらっしゃいますね。お気持ちとして「魂入れの分」を上乗せすべきか、あるいは別の袋にすべきか、迷うお気持ちはよく分かります。
しかし、基本的には四十九日法要の一連の流れの中で魂入れも行われるため、「御布施」として一つの袋にまとめて問題ありません。もし丁寧に行いたい場合は、法要のお布施とは別に「開眼供養御礼」として5,000円~10,000円を包んでも、もちろん失礼にはあたりません。
魂抜きのお布施と閉眼供養

「魂抜き(たましいぬき)」は、「閉眼供養(へいげんくよう)」や「お性根抜き(おしょうねぬき)」とも呼ばれ、魂入れとは全く逆の儀式です。魂入れで宿らせた故人の魂やご本尊の力を、一時的に抜いて「モノ」の状態に戻すことを意味します。
具体的には、以下のようなタイミングで魂抜き(閉眼供養)が必要とされます。
- 四十九日法要で、白木位牌から本位牌へ魂を移す時: この場合、白木位牌から魂を抜き、本位牌へ魂を入れる儀式が同時に行われます。
- 古い位牌を処分する時: (例:弔い上げで過去帳に移す、位牌が損傷したなど)
- お仏壇や位牌を修理・クリーニングする時: 魂が宿ったままの位牌を修理(=傷つける)ことはできないため。
- お仏壇や位牌を別の場所へ移動する(引っ越す)時。
お布施に関してですが、四十九日法要で本位牌への「魂入れ」と同時に白木位牌の「魂抜き」を行う場合、一連の儀式に含まれるため、追加のお布施は不要とされることがほとんどです。
一方で、古いお位牌の処分や、お仏壇の引っ越しなどのために「魂抜き(閉眼供養)だけ」を単独で依頼する場合は、お布施が必要になります。金額の目安は、魂入れ単独の場合と同様に10,000円~30,000円程度とされます。
夫婦位牌の魂入れについて

「夫婦位牌(めおといはい)」とは、一つの位牌にご夫婦二人の戒名(法名)を連名で記すものです。近年、お仏壇をコンパクトにしたいというニーズや、「亡くなった後も二人一緒にいたい」という想いから選ばれることが増えています。
夫婦位牌の場合、魂入れは以下の流れで、時間差を置いて二度行われることになります。
- お一人目が亡くなった際に、夫婦位牌を作成します。 (この時、お一人目の戒名を彫り、ご健在であるお二人目の戒名も朱色で彫っておくか、スペースを空けておきます) → この時点で、お一人目のための1回目の「魂入れ」を行います。
- その後、お二人目が亡くなった際に、仏具店に位牌を預け、お二人目の戒名を追加で彫り込んでもらいます。(朱色だった場合は、その色を抜きます)
- 戒名が追加された位牌が戻ってきたら、お二人目の魂を位牌に宿らせるため、再度「魂入れ(開眼供養)」の法要を行います。
つまり、夫婦位牌では、お二人目の戒名を追加した際にもう一度、魂入れの儀式(法要)が必要になります。その際にお渡しするお布施は、単独での魂入れ(10,000円~30,000円程度)の相場に準じます。この法要は、お二人目の納骨法要などと合わせて行うことが多いです。
お布施の金額をお寺に聞く際の例文

お布施は感謝の気持ちであり定価はない、と頭では分かっていても、相場から大きく外れていないか、少なすぎて失礼にあたらないか、と不安になるものです。僧侶に直接金額を尋ねることは「値切っているようで失礼だ」と、躊躇される方も多いでしょう。
しかし、不安なまま準備するよりも、率直にご相談いただく方が確実です。お寺側も、檀家さんが悩んでいることは承知している場合が多いです。大切なのはその「聞き方」です。以下に失礼のない尋ね方の例文をご紹介します。
【電話・対面での確認例文】
「お忙しいところ恐れ入ります、今度お願いしております開眼供養の件で、少々お伺いしたいことがございます。準備にあたりまして、皆様、お布施はどれくらいお包みされていらっしゃいますでしょうか?」
「あわせて、御車料や御膳料は、私どもの方でご用意すべきでしょうか?」
このように「皆様はどうされていますか?」という形で、自分ではなく一般論としてお伺いを立てると、角が立たず、僧侶も答えやすくなります。電話をかける際は、法要中や早朝・深夜を避けるといった配慮も大切です。
もし「お気持ちで結構ですよ」とお返事があった場合は、これ以上深く尋ねるのは控え、前述の相場(単独なら1〜3万円、法要と同時なら3〜5万円)を目安に、ご自身の感謝の気持ちを込めて判断し、包むとよいでしょう。
魂入れ・お布施に関するQ&A

最後に、位牌の魂入れやお布施に関して、多くの方が抱かれる細かい疑問についてQ&A形式でまとめてお答えします。
Q. お布施は新札で用意すべきですか?
A. お通夜やお葬式のお香典(弔事)では、「不幸を予期して準備していた」と受け取られることを避けるため、あえて新札を使わないのがマナーとされています。しかし、魂入れ(開眼供養)は、前述の通り「弔事」ではありません。むしろ「仏様の家開き」という側面があり、前もって準備するものです。
そのため、新札を用意しても全く失礼にはあたりません。むしろ、感謝の気持ちを表すために丁寧であるとも言えます。もし新札が手元になければ、わざわざ両替に行く必要はありませんが、なるべくシワや汚れのない綺麗なお札(ピン札)を選んで包むとよいでしょう。
Q. 魂入れはいつまでに行うべきですか?
A. 最も多いのは、白木位牌(仮の位牌)から本位牌へ切り替える四十九日法要のタイミングです。これは、故人の魂の行き先が決まる大切な節目に、魂の依り代(よりしろ)を本位牌へ移すという意味合いがあります。
しかし、必ずしもこの日でなければならないという厳格な決まりはありません。お位牌の準備が間に合わなかった場合や、諸事情で遅れた場合でも、一周忌やお盆、お彼岸といった他の法要と合わせて行ったり、ご家族の都合の良い日に単独で魂入れの法要を依頼したりしても全く問題ありません。大切なのは、故人を供養するために儀式を行うことです。
Q. 魂入れをしないとどうなりますか?
A. 多くの宗派(※浄土真宗などを除く)では、魂入れ(開眼供養)の儀式を経て初めて、その位牌が故人の魂が宿る「礼拝の対象」になると考えられています。
儀式を行わないままでは、お位牌はいくら高価なものであっても、単なる「故人の名前が書かれた木札」「モノ」のままということになります。故人そのものとして手を合わせ、日々の感謝や報告を伝え、供養していくためには、僧侶による法要を通じて魂を宿らせる儀式が必要不可欠とされています。
位牌の魂入れとお布施の要点
- 位牌の魂入れは「開眼供養」とも呼ばれる大切な儀式
- お布施の相場は単独なら1万円から3万円程度が目安
- 四十九日法要と一緒なら法要のお布施(3万円から5万円程度)に含める
- お布施とは別に「御車料」や「御膳料」が必要な場合がある
- お布施の袋は水引のない白無地封筒が最も無難
- 魂入れのお布施の表書きは必ず「濃墨」で「御布施」と書く
- 魂入れ(開眼供養)は弔事ではないため薄墨は使わない
- お布施は袱紗(ふくさ)に包み僧侶から読める向きで渡す
- 「位牌代」は仏具店に払う商品代金でありお布施とは別物
- 位牌代の封筒の書き方は「御位牌代」とするか支払いはそのまま行う
- 浄土真宗は「魂入れ」の概念がなく「入仏法要」という儀式を行う
- 魂入れのお布施について曹洞宗は一般的なマナーや相場に準ずる
- 古い位牌を処分する際は「魂抜き(閉眼供養)」のお布施が必要
- 夫婦位牌は二人目の戒名を入れた後にもう一度魂入れを行う
- 金額やマナーに迷ったら菩提寺に「皆様どうされていますか」と相談するのが確実

