親族の訃報は予期せぬタイミングで届くものであり、深い悲しみの中で葬儀の準備を進める際、香典の金額について迷う場面は少なくありません。特に、孫夫婦として参列する場合にいくら包むのが適切なのか、あるいは最も近い関係である兄弟に対して10万円という金額は高すぎるのかといった疑問が生じることがあります。
また、相手が年長者であり自分の兄弟が70代の場合や、自分自身が働き盛りであるときの相場として50代の金額目安も気になるところでしょう。さらに、息子の嫁の親や息子の嫁の祖母といった義理の関係であれば、血縁とは異なる距離感の難しさがあり、なおさら判断に悩みます。
地域や家ごとの慣習が最優先されるとはいえ、一般的なマナーや相場の基準を知っておくことは、大人の振る舞いとして非常に大切です。この記事では、関係性や年齢に応じた適切な金額を網羅的に解説します。
- 故人との関係性や自分の年齢に応じた適切な香典の金額目安
- 兄弟や孫夫婦など判断に迷いがちなケースでの具体的な金額
- 義理の親族への対応や家族葬で辞退された場合のマナー
- 香典の郵送方法や新札の扱いなどよくある疑問への回答
親族への香典相場を一覧で解説
親族といっても、故人との関係の深さやあなた自身の年齢によって包むべき金額は大きく異なります。ここでは、まず把握しておきたい基本的な相場の目安を一覧で確認し、兄弟や孫といった具体的なケースごとの考え方について詳しく解説していきます。
祖父母や叔父叔母の金額早見表

親族へ包む香典の金額は、血縁の濃さと自身の社会的立場(年齢)によって変動するのが一般的とされています。一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会が行ったアンケート調査などのデータを見ても、近親者への香典は年齢とともに上昇する傾向が顕著です。
以下に、主要な関係性ごとの相場目安をまとめましたので、まずは全体像を把握してください。
| 故人との関係 | 20代・30代 | 40代・50代 | 60代・70代以上 |
|---|---|---|---|
| 祖父母 | 1万円〜3万円 | 3万円〜5万円 | 3万円〜5万円 |
| 両親 | 3万円〜5万円 | 5万円〜10万円 | 10万円〜 |
| 兄弟・姉妹 | 3万円〜5万円 | 3万円〜5万円 | 5万円〜 |
| 叔父・叔母 | 1万円〜2万円 | 2万円〜3万円 | 3万円〜 |
| その他親戚 | 5千円〜1万円 | 1万円〜2万円 | 1万円〜3万円 |
参照:一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会「香典に関するアンケート調査」によると、最多回答額帯は上記と同様の傾向を示しており、特に親族間では相互扶助の意味合いが強いため、友人や知人よりも高額になることが一般的です。
ここに注意! 上記はあくまで全国的な目安とされています。地域によっては「親族は一律〇万円」と決まっている場合や、逆に「相互扶助のために高額を包む」という慣習がある地域も存在します。最終的な判断の前に、必ず親しい親族に確認することをおすすめします。
兄弟に10万円は包みすぎか確認

兄弟姉妹が亡くなった際、「最も近い身内だから」「今までお世話になったから」という気持ちから10万円を包むべきか悩む方が多くいます。しかし、一般的に兄弟への香典相場は3万円から5万円が中心とされており、10万円は特別なケースに該当すると考えられています。
10万円を包むことが推奨されるのは、主に以下のような状況に限られます。
- あなたが喪主の代理を務めるなど、葬儀費用の援助としての意味合いが強い場合
- 生前に経済的な援助を受けていたなど、特別な感謝の気持ちを表したい場合
- あなたが「家長」としての立場にあり、一族を代表して多めに包む必要がある場合
気持ちを込めて多く包みたいと考えるのは素晴らしいことですが、高額すぎる香典はかえって遺族の負担になる可能性があります。
香典返しの負担に配慮を 多くの地域では、いただいた香典の半額から3分の1程度を「香典返し」としてお返しする習慣があります。もし10万円を包むと、遺族は3万円から5万円相当の品物を用意しなければなりません。
葬儀前後の多忙な時期に、高額なお返しの手配や手続きの手間を増やしてしまうリスクがある点に十分注意しましょう。特別な事情がなければ、5万円に留めておくのが無難でスマートな選択です。 (参照:国税庁:贈与税がかからない場合)
70代が兄弟に包む金額の目安

ご自身が70代の場合、すでに定年退職をして年金生活を送っている方も多いでしょう。現役世代と比較して収入が限られる中で、兄弟の葬儀にどれくらい包むべきかは切実な悩みとなります。
70代であっても、兄弟への香典は3万円から5万円を目安とするのが一般的です。確かに年長者としては多めに包みたい心理が働きますが、ご自身の生活が苦しい場合や、これからの生活資金を守る必要がある場合は、無理をして高額を包む必要はないとされています。
年長者としての立場を示す方法 金額だけで威厳を示そうとする必要はありません。例えば、香典の金額は相場通り(3万円など)にしつつ、別途「供花(きょうか)」や「果物の盛り合わせ(供物)」を送ることで弔意を示すという方法もあります。これならば、見た目にも華やかで丁寧な印象を与えることができます。
重要なのは金額の多寡よりも、兄弟を見送る気持ちです。経済状況に合わせて、他の兄弟や親戚と相談しながら無理のない金額を決定してください。
50代の相場は社会的立場で決まる

50代は社会的な責任が重くなり、親族内でも中心的な役割を期待される世代です。そのため、20代や30代の頃と比較して、香典の金額も相場の上限寄りを意識することが望ましいとされています。
例えば、叔父や叔母の葬儀の場合、若い世代であれば1万円でも許容されることが多いですが、50代であれば2万円から3万円を包むのが大人のマナーとされる傾向にあります。これは、経済的な安定性への期待や、親族を支える立場としての責任が求められるためです。
| 対象 | 50代の相場目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 兄弟・姉妹 | 5万円 | 基本的には5万円が推奨されます。 |
| 叔父・叔母 | 2万円〜3万円 | 親密度が高い場合は3万円が無難です。 |
| いとこ | 1万円〜2万円 | お付き合いの深さで判断します。 |
50代は「親族のまとめ役」へと移行する時期でもあります。金額を決める際は、自分だけで判断せず、若い世代(甥や姪など)からの相談に乗れるよう、地域の相場を把握しておくことも大切です。「私が確認しておくから」とリードしてあげると、親族間の調整がスムーズに進みます。
孫夫婦はいくら包むのが正解か

孫が既婚者の場合、夫婦連名で香典を包むことが一般的です。この際、「2人分だから2倍の金額が必要か」と悩むことがありますが、香典は基本的に「1世帯」単位で考えます。
孫夫婦が包む金額の目安は、一般的に2万円から3万円とされています。
| 孫の年代 | 単独の場合 | 夫婦連名の場合 |
|---|---|---|
| 20代 | 1万円 | 2万円 |
| 30代以上 | 1万円〜3万円 | 2万円〜3万円 |
ここで問題になるのが「2万円」という偶数の金額です。かつては「割り切れる数字(偶数)は縁が切れることにつながる」として敬遠される傾向がありましたが、現在では「ペア」という意味合いや利便性から2万円も許容されるのが一般的です。
2万円を包む際のマナー もし2万円という偶数が気になる場合や、地域の慣習で厳しく言われている場合は、以下のいずれかの方法で対応すると丁寧です。 ・金額を3万円に引き上げる ・1万円札1枚と5千円札2枚を入れ、お札の枚数を奇数(3枚)にする
また、「孫一同」として出す場合は、取りまとめ役を決め、一人当たり3千円〜5千円程度を集金して一つの包みにします。この場合、香典返しを辞退する旨を書き添えるなどの配慮も有効です。
親族の香典相場で迷う義理のケースと必須マナー
血縁関係のある親族以上に判断が難しいのが、配偶者側の親族や、息子の配偶者側の親族といった「義理の関係」です。また、近年増えている家族葬や、遠方で参列できない場合の対応など、イレギュラーな事態への備えも必要です。ここでは、特にお悩みが多いケースと恥をかかないための実践的なマナーについて解説します。
息子の嫁の親へ包む金額の目安

「息子の嫁の親(親家)」に不幸があった場合、今後も続く親戚付き合いを考慮し、失礼のない金額を包む必要があります。一般的な相場としては、3万円から5万円を目安とするケースが多く見られます。
ただし、この関係性においては地域や家庭の方針による違いが大きく影響します。
- 相互扶助の地域:「お互い様」という考えで、冠婚葬祭の金額を一律(例:1万円や3万円)に取り決めている場合があります。
- 距離感を保つ地域:あえて高額にせず、相手に気を遣わせない金額(1万円〜2万円)に留める場合もあります。
最も確実な方法は、息子夫婦を通じて相手方の意向や地域の慣習を確認してもらうことです。「親族間で金額を統一しているか」「他の親戚はどうしているか」といった情報を事前に得られれば、安心して準備ができます。
息子の嫁の祖母にはいくら必要か

「息子の嫁の祖母」となると、関係性はかなり遠くなります。この場合、香典を包むべきかどうかは「葬儀に参列するかどうか」で判断するのが一般的です。
基本的な考え方は以下の通りです。
- 葬儀に参列する場合:5千円から1万円程度を包みます。
- 参列しない場合:無理に香典を送る必要はないとされることが多いです。弔電を送るか、後日お悔やみの手紙を添えてお線香などを送る程度で十分な場合もあります。
過度な気遣いは逆効果も あまりに遠い親戚から高額な香典(3万円など)が届くと、先方はお返しの対応に困惑してしまうことがあります。あくまで「息子の配偶者の祖母」という距離感を踏まえ、控えめに対応するのがスマートな大人のマナーと言えるでしょう。
香典辞退や家族葬と言われたら

近年増えている「家族葬」では、遺族から「香典を辞退します(ご厚志お断り)」と案内されるケースがあります。この場合、無理に渡すのは明確なマナー違反となります。遺族は香典返しの手間を省き、静かに故人を送りたいと考えているため、その意思を尊重しましょう。
香典だけでなく、供花や供物も辞退されているか案内状をよく確認しましょう。もし「香典は辞退するが、供花は受け付ける」という記載がある場合は、お花を送ることで弔意を示すのが適切です。
迷った場合の対応 案内状に明確な記載がない場合は、念のため香典を持参し、受付で確認します。「申し訳ございませんが、受け取っておりません」と言われたら、無理強いせずにすぐに引き下がるのがスマートな対応です。
参列できない場合の郵送マナー
遠方に住んでいる等の理由で葬儀に参列できない場合、香典を郵送で渡すことは失礼にはあたりません。ただし、現金を送る際は必ず現金書留を使用する必要があります。普通郵便で現金を送ることは郵便法で禁止されています。
参照:日本郵便「現金書留」のサービス案内によると、専用の封筒を使用して現金を送付する仕組みとなっており、万が一の際の賠償制度も備わっています。
郵送の具体的な手順は以下の通りです。
- 香典を香典袋(不祝儀袋)に包み、表書きや中袋を記入する。
- 郵便局の窓口で「現金書留用の封筒」を購入する(サイズ大小あり)。
- 香典袋を現金書留封筒に入れ、お悔やみの手紙(一筆箋)を添える。
- 封をして割印を押し、郵便局の窓口から発送する。
何も言葉を添えずに現金だけを送るのは事務的な印象を与えてしまうため、短い文章でも手紙を同封し、参列できないお詫びと故人への想いを丁寧に伝えましょう。
袱紗の色と受付での渡し方

金額や袋の準備ができても、当日の渡し方で戸惑ってしまうことがあります。香典はカバンやスーツのポケットから直接出すのではなく、必ず袱紗(ふくさ)に包んで持参するのがマナーです。
- 袱紗の色:弔事では、紫・緑・紺・グレーなどの「寒色系」を使用します。赤やピンク、オレンジなどの暖色は慶事(お祝い)用のため、絶対に使用してはいけません。紫色は慶弔両用として使えるため、一枚持っておくと便利です。
- 渡し方:受付の順番が来たら袱紗から香典袋を取り出し、袱紗を畳んでその上に乗せます(台代わりにする)。相手が表書きを読める向き(反時計回りに180度回す)にしてから、「この度はご愁傷様です」と一言添えて両手で渡します。
新札や子供の香典などよくある質問

最後に、香典を準備する際によくある疑問についてQ&A形式でまとめました。細かい部分ですが、知っておくと安心です。
| Q. 新札(ピン札)を使ってもいい? | A. 避けるか、折り目をつけます。 新札は「不幸を予期して事前に準備していた」と捉えられるため、かつてはタブーでした。現在はそこまで厳格ではありませんが、新札しかない場合は一度中心に折り目をつけてから包むのが無難なマナーです。 |
|---|---|
| Q. 小学生や赤ちゃんの孫に香典は必要? | A. 基本的に不要です。 親(あなたやあなたの子供)が扶養している子供の場合、香典は親の包む金額に含まれていると考えます。独立して収入を得ている社会人の孫であれば、個別に包む必要があります。 |
| Q. 4と9が付く金額は避けるべき? | A. 避けた方が良いとされます。 「4(死)」や「9(苦)」を連想させるため、4千円や9千円といった金額は避けるのがマナーです。親族間であっても、3万円、5万円、10万円といったキリの良い数字を選びましょう。 |
親族の香典相場は事前の相談が鍵
ここまで、年齢や関係性ごとの一般的な香典相場に加え、家族葬や郵送といった具体的なマナーについても解説してきました。最も大切なのは「親族間で足並みを揃えること」です。相場はあくまで目安であり、実際の現場では独自のルールが優先されることが多々あります。
- 親族への香典額は年齢と関係性で決まる
- 兄弟への香典は3万円から5万円が基本線
- 10万円は特別な事情がない限り避けた方が無難
- 50代は社会的責任を考慮して相場の上限を意識
- 70代は無理のない範囲で年長者としての対応を
- 孫夫婦は連名で2万円から3万円が目安
- 息子の嫁の親には3万円から5万円程度
- 息子の嫁の祖母など遠縁は参列有無で判断
- 香典辞退の案内があれば無理に渡さない
- 参列できない場合は現金書留で郵送する
- 袱紗は寒色系を選び受付で丁寧に取り出す
- 地域や家ごとの慣習(ローカルルール)が最優先
- 迷ったら独断せず近い親戚に相談する
- 過剰な金額は香典返しで遺族を困らせる原因になる
- 最終的には故人を偲ぶ気持ちが最も重要

