故人を偲ぶ大切なお位牌の準備を進める中で、「位牌の戒名入れの値段」は多くの方が気になる点です。お位牌の作成には、位牌本体の値段とは別に、文字入れの値段がかかることが一般的です。
また、戒名入れの値段とお寺に支払う費用との違いや、戒名なしの値段についても知っておく必要があります。お位牌を作る値段は、選ぶ文字の彫刻方法や、名前入れの値段の詳細によっても変わってきます。
値段が安いものから高価なものまで幅広く、位牌の作成の値段がどう決まるのか、その内訳は複雑に感じられるかもしれません。近年では、伝統的な位牌の代わりになるものの選択肢も増えています。
この記事では、お位牌の文字入れに関する費用について、様々な角度から詳しく解説します。
- 戒名入れ(文字入れ)にかかる費用の基本的な相場
- お位牌本体の価格を含めた総費用の計算方法
- 戒名なし(俗名)で作成する場合の値段や注意点
- 費用を抑えるための具体的な方法や選択肢
位牌の戒名入れの値段、相場と内訳
お位牌の準備にかかる費用は、大きく分けて「お位牌本体の価格」と「戒名を入れる作業費」の二つで構成されています。ここでは、戒名入れの値段に関する相場や、お位牌を新しく作る際の総費用、そして価格が決まる要因について詳しく解説します。
文字入れの値段の目安はいくら?

お位牌への文字入れの値段は、1名様分あたり3,000円から10,000円程度が一般的な目安とされています。これは、戒名(法名)、没年月日、俗名(生前のお名前)、享年(行年)をまとめて入れる際の作業費です。
ただし、この金額はあくまで目安です。お店によっては「お位牌本体の価格に1名分の文字入れ代を含む」としている場合や、「一律〇〇円」といった設定にしていることもあります。逆に、夫婦位牌(めおといはい)などで2名分の文字を同時に入れる場合は、料金が1.5倍や2倍になるケース(例:5,000円~15,000円程度)が多いため、事前に確認が必要です。
ポイント
- 文字入れ代の相場:1名分 3,000円~10,000円
- お店によって「本体価格に込み」の場合と「別途請求」の場合がある
- 2名分(夫婦位牌など)は料金が割増になることが多い
位牌を新しく作る値段の全体像

お位牌を新しく作る値段を考える際は、必ず「総額」で把握することが重要です。お位牌の準備にかかる総費用は、以下の計算式で表すことができます。
総費用 = (1) お位牌本体の値段 + (2) 文字入れの値段
読者が注目しがちなのは(2)の文字入れ代ですが、実際には(1)のお位牌本体の値段の方が、総額に与える影響は大きくなります。お位牌本体の価格は、材質やデザイン、製造方法によって数千円のものから数十万円、場合によっては百万円を超えるものまで、非常に幅広いです。
「文字入れ無料」と書かれていても、その分がお位牌本体の価格に含まれている可能性もあります。単純な安さだけでなく、「本体価格」と「文字入れ代」を合計した総額で比較・検討することをお勧めします。
位牌の作成の値段はどう決まる?

お位牌の作成の値段、特に「お位牌本体」の価格は、主に以下の要素によって決まります。高価なものには、それだけの理由(材質や手間)があることが多いです。(参考:全日本宗教用具協同組合:位牌の話(1) 位牌って何ですか)
1. 材質(木材)
使われる木材によって価格が大きく変動します。高級な「唐木(からき)」と呼ばれる黒檀(こくたん)や紫檀(したん)は、重厚で耐久性が高く、価格も高くなる傾向にあります。その他、檜(ひのき)やヒバ、安価なものでは合成木材などが使われることもあります。
2. 塗り・仕上げ
「塗り位牌」の場合、漆(うるし)の塗り方や回数、仕上げの方法で値段が変わります。職人が何度も手作業で漆を塗り重ねる「本漆塗り」は非常に高価ですが、美しい光沢と耐久性を持ちます。一方、合成塗料(カシューなど)を使用したものは、比較的安価に仕上げることができます。
3. 装飾(加飾)
金粉や金箔(きんぱく)を施す量や、蒔絵(まきえ)などの伝統技法を用いた装飾が入ると、その分、職人の手間がかかるため価格は上がります。
4. サイズ
お位牌は「寸(すん)」という単位(1寸=約3cm)で大きさが表されます。一般的に、サイズが大きくなるほど価格も高くなります。お位牌のサイズは、通常、文字を入れる「札板(ふだいた)」の高さを指します。
| 価格帯(目安) | 材質・仕上げの特徴 | 主な購入層・用途 |
|---|---|---|
| 1万円未満 | 合成木材、合成塗料(カシューなど)、シンプルなデザイン | とにかく費用を抑えたい場合、仮の位牌(白木位牌)の代わり |
| 1万円~5万円 | 唐木(黒檀・紫檀)の普及品、標準的な塗り位牌 | 最も一般的な価格帯、多くの人に選ばれている |
| 5万円~10万円 | 上質な唐木、本漆塗り(一部)、丁寧な装飾(蒔絵など) | 材質やデザインにこだわりたい場合 |
| 10万円以上 | 最高級の木材(銘木)、本漆手塗り、著名な職人による蒔絵 | 代々受け継ぐものとして、最高品質を求める場合 |
本記事に記載されている費用や値段は、あくまで一般的な目安です。地域、依頼先、お位牌の材質やサイズ、文字入れの方法によって大きく変動する可能性があります。 正確な金額については、必ず依頼を検討している仏具店や寺院に直接見積もりを依頼し、ご確認ください。
名前入れの値段と戒名との違い

お位牌に入れる文字として「戒名」が一般的ですが、生前のお名前である「俗名(ぞくみょう)」を入れることもあります。この「名前入れの値段」について、疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
結論から言うと、戒名ではなく俗名(名前)を入れる場合でも、文字入れの値段は変わらないことがほとんどです。
仏具店や業者が設定している「文字入れ代」は、あくまで「お位牌に文字を彫刻、または書き入れる作業」に対する技術料です。そのため、入れる内容が戒名であっても、俗名(例:「〇〇 〇〇 之霊位」)であっても、作業の手間は基本的に同じであるため、料金に差は設けられていないのです。
戒名なしの値段と俗名での作成

「お寺とのお付き合いがない」「無宗教だった」などの理由で、戒名を授かっていない(戒名なし)場合でも、お位牌を作成することは全く問題ありません。
前述の通り、この場合の「戒名なしの値段」というのは、戒名を入れる場合と作業費(文字入れ代)は同じです。お位牌本体の価格も、戒名の有無によって変わることはありません。
戒名なしの場合は、お位牌の札板に生前の名前(俗名)を入れます。一般的なレイアウトとしては、表面に「(俗名)之霊位」や「(俗名)之御霊」と入れ、裏面に没年月日や享年(行年)を彫刻します。どのようなレイアウトにするかは、依頼する仏具店と相談して決めることができます。
補足:無宗教でも位牌は作れる? はい、作れます。お位牌は本来、仏教の儀式で用いられるものですが、近年では故人を偲ぶための「心の拠り所」として、宗教・宗派を問わずお位牌を準備される方も増えています。
すでにある位牌への「追加彫り(追記)」の値段

夫婦位牌(めおといはい)などで、先に亡くなられた方の戒名がすでに入っており、後からもう1名分の戒名を追記(追加彫り)するケースがあります。
この場合の値段相場は、新規で1名分を入れる場合と同等か、少し割高(例:5,000円~15,000円)になることが一般的です。
追加彫りの注意点
追加彫りを依頼する場合、お位牌そのものを一度仏具店に預ける必要があります。文字の書体(フォント)やレイアウトを以前と揃える必要があるため、原則として、そのお位牌を購入した仏具店に依頼するのが最も確実です。
もし購入したお店が不明な場合は、他店で受けてもらえるか相談が必要ですが、断られたり、割高な料金になったりする可能性があります。
位牌の戒名入れの値段、依頼先と方法
位牌の戒名入れの値段は、文字をどのように入れるかという「方法」や、「どこに依頼するか」によっても変動します。ここでは、文字の入れ方の種類や、お寺との費用の違い、そして値段を安く抑えるポイントについて解説します。
機械による文字の特徴

現在、お位牌への文字入れで最も主流となっているのが「機械」を使用する方法です。これには大きく分けて2種類あります。
1. 機械彫り
コンピューター制御の彫刻機(ルーター)を使って、札板に文字を物理的に彫り込む方法です。彫った溝に金粉や金箔、または白い塗料などを入れて仕上げます。
- メリット: 文字が立体的で、高級感がある。耐久性が高く、文字が消えにくい。
- デメリット: 複雑な文字や小さな文字が潰れやすい場合がある。
- 値段: 手書きや機械書きに比べ、標準的か、やや高めになる傾向があります。
2. 機械書き(プリント)
機械を使って、札板の表面に文字を書き入れる(印刷する)方法です。見た目は手書き風に仕上がりますが、実際には特殊なプリンターやプロッターで描画されます。
- メリット: 費用が比較的安価なことが多い。均一で美しい仕上がりになる。
- デメリット: 表面に書いているだけなので、経年劣化で剥がれたり薄くなったりする可能性がある。
- 値段: 「機械彫り」や「手書き」に比べて、安価に設定されていることが多いです。
彫刻の方法と料金の傾向

前項の「機械彫り」の他に、伝統的な方法として「手書き(手彫り)」があります。文字入れの方法として、この「彫刻(彫り)」と「書き」は、料金に大きく影響します。 (参考:経済産業省:伝統的工芸品とは)
手書き(書き文字)
職人や僧侶が、漆(うるし)や金粉を使って一文字ずつ丁寧に筆で書き入れる方法です。非常に高い技術と手間、時間がかかります。
- メリット: 機械にはない、温かみや独特の風合いが出る。伝統を重んじることができる。
- デメリット: 料金が最も高額になる。完成までに時間がかかる(数週間~)。書き手によって書体に個性が出る。
- 値段: 8,000円~15,000円、あるいはそれ以上になることもあります。
最近では「機械彫り」が主流です。安価で早く、仕上がりも均一で美しいからです。「手書き」は非常に高価になりますが、特別なこだわりがある場合に選ばれる選択肢と言えるでしょう。迷った場合は、最も一般的でバランスの取れた「機械彫り」をお勧めします。
戒名入れの値段とお寺の役割

「戒名入れの値段 お寺」と検索される方がいますが、ここで非常に重要な注意点があります。費用には2種類あり、これらは全くの別物です。
注意!「戒名料」と「文字入れ代」は別物です
1. 戒名料(かいみょうりょう) ・支払う相手: お寺(菩提寺) ・内容: 故人に「信士」「居士」「大姉」などの戒名(法名)を授けてもらう(付けてもらう)ためのお布施。 ・値段: 数十万円~百万円以上。お寺との関係性や戒名のランク(位号)によって大きく変動します。
2. 戒名入れ代(文字入れ代) ・支払う相手: 仏具店、ネットショップ ・内容: お寺から頂いた戒名を、購入したお位牌に彫刻・筆書きする「作業費」。 ・値段: 数千円~1万円程度。(この記事のテーマ)
つまり、お寺に支払うのは「戒名そのもの」を頂くためのお金であり、仏具店に支払うのは「文字を入れる作業」のお金です。お寺で戒名入れ(文字入れ作業)まで行ってくれるケースは稀ですので、混同しないよう注意が必要です。
四十九日に間に合わせる「納期」と注文の流れ

お位牌は、四十九日法要までに本位牌(ほんいはい)を準備するのが一般的です。しかし、文字入れには時間がかかるため、法要の当日から逆算して最低でも2週間~3週間前には注文を完了させる必要があります。
1. 注文から完成までの日数
文字入れの方法や依頼先によって異なりますが、目安は「7日~14日程度」です。ただし、職人による「手書き」を依頼する場合や、確認のやり取りに時間がかかった場合は、3週間以上かかることもあります。
2. 依頼時に必要な情報
注文をスムーズに進めるため、以下の情報は事前に正確に準備しておきましょう。特に誤字・脱字は厳禁です。白木位牌や、お寺から頂いた戒名の紙(戒名紙)をそのまま持参するか、正確に書き写します。
- 戒名(かいみょう)または 法名(ほうみょう)
- 没年月日(ぼつねんがっぴ)
- 俗名(ぞくみょう)(生前のお名前)
- 享年(きょうねん)または 行年(ぎょうねん)(亡くなった年齢)
- 梵字(ぼんじ)の有無(宗派によって異なります)
3. レイアウト(校正)の確認
多くの仏具店やネットショップでは、文字を入れる前に「文字入れ原稿(レイアウト図)」を作成し、確認を求められます。この確認作業を怠ると、万が一間違いがあった場合、作り直し(有料)になる可能性があります。必ず最終確認を行ってください。
値段が安い位牌を選ぶポイント

四十九日法要までに本位牌を準備する必要があるものの、できるだけ費用を抑えたい場合、値段が安い位牌を選ぶにはいくつかのポイントがあります。
1. オンラインショップ(ネット通販)を利用する
実店舗を持つ仏具店に比べ、ネット通販は人件費や店舗維持費がかからないため、お位牌本体の価格が安く設定されていることが多いです。また、「文字入れ代1名分無料」といったサービスを行っている店舗も多く、総額を抑えやすくなります。
ネット通販の注意点 実物を見られないため、質感や大きさがイメージと異なる場合があります。また、文字入れの原稿(レイアウト)の確認がメールやFAXでのやり取りになるため、誤字脱字がないよう、ご自身での最終確認が非常に重要になります。
2. 材質や装飾をシンプルなものにする
前述の通り、価格は材質や装飾に大きく左右されます。黒檀や紫檀などの高級な唐木ではなく、標準的な木材を選んだり、本漆塗りでなく合成塗料のものを選んだり、金箔や蒔絵などの装飾がないシンプルなデザイン(例:「春日型」など)を選ぶことで、価格を大幅に抑えることが可能です。
3. 文字入れの方法を「機械書き」にする
「手書き」や「機械彫り」に比べ、「機械書き(プリント)」は安価な傾向があります。費用を最優先する場合は、機械書きに対応しているお位牌を選ぶのも一つの方法です。
位牌の代わりになるものの選択肢

近年では、ライフスタイルや住環境の変化(仏壇を置くスペースがない、洋室に合うものが良いなど)に伴い、伝統的なお位牌の「代わりになるもの」を選ぶ方も増えています。
1. 過去帳(かこちょう)
故人の戒名(法名)、俗名、没年月日などを記しておく帳面(ノート)です。特に浄土真宗では、お位牌の代わりにこの過去帳を仏壇に備えます。お位牌を何本も置くスペースがない場合、過去帳にまとめて記すこともあります。
2. モダン位牌(家具調位牌)
リビングや洋室にも合うようにデザインされた、現代的なお位牌です。木材だけでなく、クリスタルガラス製のものや、金属と木を組み合わせたものなど、デザインは多様です。クリスタル位牌の場合、戒名などをレーザー彫刻することが多く、価格帯も幅広いです。
3. 手元供養(てもとくよう)
お位牌を置かずに、ご遺骨の一部を納めた小さな骨壺(ミニ骨壺)や、ご遺骨を加工したアクセサリー(ペンダントなど)を、故人を偲ぶ対象とする方法です。自宅で身近に故人を感じたいという方に選ばれています。
位牌作成の「よくある質問」(Q&A)
最後に、お位牌の作成に関してよく寄せられる疑問点についてお答えします。
Q. 位牌が完成したら、すぐに仏壇に置いてよいですか?
A. 「開眼供養(かいげんくよう)」という儀式が必要です。
新しく作られたお位牌は、まだ故人の魂が宿っていない「モノ」の状態とされています。四十九日法要などのタイミングで、お寺(僧侶)に「開眼供養(魂入れ、お性根入れとも言います)」と呼ばれる儀式を行っていただき、初めて礼拝の対象となります。
開眼供養のお布施は? 開眼供養のお布施の相場は、1万円~5万円程度(あるいは法要全体のお布施に含める)とされていますが、地域やお寺との関係性によって異なります。別途「お車代」や「御膳料」が必要な場合もありますので、事前にお寺にご確認ください。
Q. 葬儀で使った「白木位牌」はどうすればいいですか?
A. 四十九日法要の後、お寺でお焚き上げしてもらいます。
葬儀から四十九日まで祭壇に安置していた仮の「白木位牌(しらきいはい)」は、本位牌への「魂の入れ替え」が終わると役目を終えます。法要を依頼したお寺にお渡しし、お焚き上げ(処分)してもらうのが一般的です。
Q. 梵字(ぼんじ)を入れると値段は変わりますか?
A. 料金に含まれている場合と、オプションの場合があります。
梵字(宗派の印のようなもの)は、戒名の上に配置されます。多くの仏具店では文字入れ代の基本料金に含まれていますが、店舗によってはオプション料金(+500円~1,000円程度)となる場合もあります。ご自身の宗派で梵字が必要かどうかは、お寺にご確認ください。
位牌の戒名入れの値段、総額で比較
お位牌の戒名入れの値段に関する要点を、最後にリストでまとめます。
- 位牌の戒名入れ(文字入れ)の値段相場は1名分3,000円から10,000円
- 総費用は「位牌本体の値段」と「文字入れの値段」の合計で考える
- ネット通販では「文字入れ無料」の場合もあるが総額での比較が重要
- 位牌本体の値段は材質(唐木など)や装飾(蒔絵など)で大きく変動する
- 戒名なしで俗名(生前の名前)を入れる場合も文字入れの値段は同じ
- お寺に支払う「戒名料(数十万円~)」は仏具店に払う「文字入れ代(数千円~)」とは全く別物
- 文字入れの方法には「機械彫り」「機械書き」「手書き」がある
- 「手書き」は高価で、「機械書き(プリント)」は安価な傾向
- 現在は「機械彫り」が最も一般的でバランスが取れている
- 値段が安い位牌を探すならネット通販でシンプルなデザインを選ぶのが近道
- すでにある位牌への「追加彫り」は新規と同等か割高になる
- 注文から完成まで7日から14日程度、四十九日法要の2~3週間前には注文する
- 位牌の作成の値段はサイズ(寸)によっても変わる
- 夫婦位牌(二人彫り)は文字入れの値段が1.5倍から2倍になることが多い
- 位牌の代わりになるものとして過去帳やモダン位牌(クリスタル製など)もある
- 完成した位牌にはお寺による「開眼供養(魂入れ)」が必要
- 費用はあくまで目安であり正確な金額は必ず見積もりで確認する

